セラミック半導体と光照射を利用した細胞の任意配置
③【関西大学】
化学生命工学部 化学・物質工学科
上田 正人教授
http://www.chemmater.kansai-u.ac.jp/ecmate/
特許 公開特許出願に基づいた技術 / 登録特許に基づいた技術
技術概要
非接触で細胞のパターニングができる新たな細胞培養器の開発。
SiO2基板上に光応答セラミックスが成膜された、非常にシンプルな構造で、化学安定性、ならびに生体親和性が高いセラミックスを利用したデバイス。光応答セラミックスの表面に細胞を播種し、培養器背面から光照射を行うと、光応答セラミックス層が紫外光(UV)を完全に吸収するため、細胞は有害なUVにさらされない。
技術の概要としては、細胞培養中に光を培養器背面から連続照射すると、細胞は接着しない。一方、光を一定時間照射した後、暗所下で細胞を培養すると、接着が促進される。この機能の切り替えを利用し、光を局所的に照射することで、細胞の接着領域を任意に制御することに成功。つまり、光照射によって非接触で細胞のパターニングができる。
光照射によって形成された細胞非接着領域に、暗所下で別の細胞を播種・培養すると、多種細胞から構成される細胞シートの作製も可能である。
既存技術・競合技術との比較
・パターニングなしの細胞シートの作製で有名な、温度応答ポリマーを用いた方法
・細胞パターニング・3Dプリンティングにおける代表的な競合技術としての剣山法,インクジェット法
との比較
●使用・作動温度
温度応答性ポリマーを用いた細胞培養器では、37°Cで培養した後、20~25°Cに冷却することで細胞を剥離する。細胞にとって冷却は好ましくない。
●コンタミ
基本的にいずれもコンタミネーションが生じないように設計されているが、剣山法では、金属製剣山と細胞塊(スフェロイド)の接触面積が非常に大きく、そのリスクは否めない。インクジェット法では、細胞を配置・固定するためのインク材料が必要である。造形された組織からみるとそれは不純物である。
●細胞2次元配置
温度応答性ポリマーを用いた細胞培養器は、温度変化によって機能発現するため、局所的に細胞接着を制御することは不可能である。
●細胞3次元配置
インクジェット法では、速硬化性インク材料が開発され、3次元化も可能となりつつある。本技術においても、パターニングしたシートを積層化することにより、3次元化が可能である。
●装置の構造
剣山法、インクジェット法の装置は非常に複雑な構造である。本研究で開発する技術・装置は、汎用型スパッタ装置で作製可能であり、特殊な装置・技法を必要としない。
●価格
装置の構造の複雑さは直接価格の上昇に繋がる。温度応答性ポリマーを用いた細胞培養器は、シンプルな構造であるが、基材へのポリマーの固定化に電子線照射等、非常に大きなエネルギーを必要とする。一方、本研究で開発する技術・装置は、汎用型スパッタ装置で作製可能であり、特殊な装置・技法を必要としない。さらに、光照射部も汎用的な既存デバイスを流用できるので、ほとんどコストがかからない。
新技術の特徴
・シンプルな構造
・非接触
・既存装置・技術の流用が可能
活用が想定される業種
・再生医療業界
想定されるビジネス用途
・再生医療
・医療デバイス
・細胞プリンター・バイオプリンター
現在のニーズ
・細胞シートの作製実験
・利用可能な装置への具現化
・資金調達