産学官加わり盛況
明治維新から150年となる今年、大河ドラマでその立役者の西郷隆盛にスポットが当たったことも相まって、注目が集まる九州地域。国内外からの旅行客でにぎわっており、かつては炭鉱で栄えた地域も今は様変わりしている。
自動車の出荷台数の全国シェアは約15%を占めている一方で農業算出額は20%を占めるという幅広い産業構造だ。域内生産額は
約400億米ドルで経済規模は
世界31位のタイと同程度。人口、面積、GDP(国内総生産)など各種経済指標は全国の約10%を占めることから「1割経済」と呼ばれている。また、現在は福岡を中心にゲーム会社や映像制作会社、これらにまつわる企業等の集積があり、産業界のみならず、
大学や行政も加わり、盛り上がりを見せている。
子供から大人までが夢中になり社会現象を巻き起こした妖怪ウォッチの生みの親、レベルファイブや東京五輪の誘致を決定づけたといわれる映像の制作を手掛けたKOO-KIなども輩出しているほか、
映画・テレビドラマ・CMなどのロケーション撮影を誘致する活動も活発で、コンテンツの
海外展開にも積極的だ。
データを高速転送
そんなコンテンツビジネスを縁の下で支えているのが、地上波・BS・CSなどのテレビ局で使われる基幹システム開発を主業とする
ユニゾンシステムズ(福岡市中央区 今村勉也代表)だ。
同社は、テレビ局が放送する番組・CMなどの編成やそれに関する関連業務を一元的に管理する基幹システムの全国トップブランドで、
緊急災害時に各情報を1つのシステムに集約し、マルチメディアやL字画面へ情報発信する業務効率化システムなども手掛けている。
それらシステム開発で培われた技術と経験と、テレビ局での現場のニーズをもとに、10ギガを超えるような大容量の映像や画像などを速く、安全かつ廉価に転送できる高速ファイル転送システムを開発、販売している。平昌オリンピックの選手のインタビューをはじめ、国内外の事件現場の取材映像など、その場の臨場感をお茶の間に伝えるジャーナリズムにとってなくてはならない存在となっている。この高速ファイル転送システムは、テレビ局だけでなく、
製造業や医療業界でも活用され、その応用範囲はコンテンツ産業を超えてさまざまな分野に広がっている。
また、近年は、画像共有システム上の映像をAI(人工知能)を使って解析することで、不成約の商談映像からその原因や傾向を浮き彫りにしたり、売れる営業パーソンと売れない営業パーソンの映像を解析して
人材教育に活用したりと、働き方改革や人材教育分野への参入も始まっている。
「先駆者、革新者ベストパートナーたれ」の経営理念の下、動画プラットフォームの製造・販売を軸に社会にインパクトを与えるサービスを開発し続けている。
九州ベンチャーのプレゼンでは、その他に月々ワンコインからホームセキュリティーサービス「スマートルームセキュリティ」を提供するプリンシプル(福岡博多区、原田宏人代表)、韓国に特化したプロモーション・マーケティング業務を展開するホスピタブル福岡市博多区、松清一平代表)、EC一元管理とECコンサルシステム「オムニコア」を展開するPear(福岡市中央区、鳥井尚輝代表)の3社が登壇した。
文:デロイトトーマツベンチャーサポート 井村仁香
※本文は2018年3月26日付け フジサンケイビジネスアイ「ニュースの卵」に掲載された内容です。記事の無断使用・転載を禁止します。