モノ消費からコト消費へ
観光庁の発表によると17年に日本を訪れた外国人は2869万人に達し、消費額は前年比約18%増の4兆4161億円を記録した。国籍、地域別に消費額を見てみると、中国人が1兆6946億円(38.4%)、次いで台湾が5744億円(13%)、韓国が5126億円(11.6%)、香港が3415億円(7.7%)でアジア勢が消費の70%を占めた。 「爆買い」という言葉が新語・流行語に選ばれた15年頃には、百貨店や免税店で商品を大量に買う「モノ」に対する消費が中心で、団体旅行で日本を訪れる人が多いという特徴があった。 しかし現在は、文化や自然、日常生活体験など「コト」に興味関心をもつ人が増えてきており、個人で旅行の手配をして少人数で行動する人が多く、行き先だけ決めて現地で情報収集しながらさまざまな体験をするという傾向がみられ団体旅行の割合は減り、年々個人旅行の割合が増えてきている。旅行前、旅行中の情報源としてSNSや口コミサイトを挙げる人が多く、同じ立場の旅行者の声を参考にする傾向が強いことがわかる。 また、旅行中に困ったこととして、英語や母国語の通じにくさや目的地までの交通手段や経路の情報取得、無料のネット環境の不足などが挙げられており、課題解決に関するサポートも求められている。
企業のコスト削減も
レアリスタ(名古屋市中区、和田大輔代表)は、そんな訪日外国人の困りごとを解決する1分間動画サービスをタートさせる。 同社は、旅行口コミサイトやホテル予約サイトなどの書き込みから人工知能(AI)を使って多くの旅行者が抱える課題を抽出し、その課題解決につながる動画を制作して自社サイトやSNSなどに掲載、拡散する。さらにその視聴の傾向や動画に対する書き込み、友達などへのシェア(共有)状況を分析して、課題解決精度や満足度の高い動画を拡充していく。 同社は昨年4月から試験的にSNSを通じて100本の動画を公開したところ、数多くの「いいね!」や書き込みなど得られアクションの数は10万を超え、サイトのフォロワーは3万人に達した。テキストと写真の投稿と比較すると、9月1カ月間のアクションの数は6~17倍高いことが分かった。 今後は、外国人旅行者からの問い合わせに時間をとられている鉄道会社や飲食店での注文の仕方など企業のコスト削減や集客につながる動画を作成することで収益化を目指していくとともに、将来的には自社プラットフォーム内で旅行の手配までできるようサービスの拡充を目指していく。
観光・インバウンドにまつわるベンチャーのプレゼンでは、その他にもスマホで誰でも簡単にスタンプラリーを作成できるサービスを展開するフェイスクリエイツ(神戸市中央区、大山雄輝代表)、森林を活用した校外学習や企業研修を提供する冒険の森(大阪府豊能群、伴戸忠三郎代表)、大阪で毎月1億円を生むクーポン付き観光フリーペーパーを発行するウェルフェアソリューションズ(大阪市中央区、井野良子代表)の3社が登壇した。
文:デロイトトーマツベンチャーサポート 井村仁香