70%が赤字経営
フードビジネスは、飲食加工などの「食料品工業」、卸や小売業など「食料品流通業」、レストランや居酒屋など「飲食サービス業」の3業態で、経済産業省によると16年の国内の市場規模は178兆7800億円とされる。インバウンド(訪日外国人)効果で好調と言われる国内ホテル業界の市場規模が2兆円にも届かないことを勘案すると、フードビジネスは非常に大きなマーケットと言える。
その中でも、飲食サービス業は参入障壁が低く、国内約82万件のうち大手チェーン店は5万8000件で全体の7%と少なく、中小規模の事業者が中心の業界である。しかし、生き残り競争は厳しく、70%が赤字経営という調査もあるほどだ。そんなレッドオーシャンでも、店舗のコンセプトやメニューに特徴を持たせ、着実に成長している店舗が存在している。
京都を代表する観光地、嵐山駅近くに店を構える「発酵食堂カモシカ」(京都市右京区、代表 関恵氏)がその一つ。みそやしょうゆをはじめ、古くから日本に伝わる「発酵食」を中心とした料理を提供しており、店名の由来は「醸す(かもす)」からきている。
14年のオープンから、ランチやスイーツを提供する一方、ワークショップを毎月1度開催するなどして、発酵食の認知や理解を深める取り組みを行っている。15年からは代表自身がセレクトした発酵食品、自宅で発酵食を楽しむためのぬか漬けキットや容器などを店舗やネットで販売を開始。「発酵食を台所に取り戻す♪」をコンセプトにおいしさや健康効果の発信はもちろん、ライフスタイルの提案を行っている。
さらに、カモシカ氏というキャラクターが会員制交流サイト(SNS)で日々発信する情報に共感し、店舗に訪れる客は絶えず、女性を中心に10代から80代まで幅広い層から支持されている。
健康経営をサポート
代表の関氏はスウェーデン留学時代に福祉を学び、医療や福祉に強い外資系コンサルティング会社でキャリアを積んだ。そんな折、第一子の出産を機に発酵と出会い、みそや梅干しを手作りするようになり、その奥深さにどんどん魅了されていった。
発酵は「一生かけても追求しきれない面白い分野」だと事業化を決意した。今後、「ビジネスの最前線に発酵食を注入する♪」をコンセプトに働く人の食を改善し、健康で長く仕事ができる体づくりを目指し、社員の意識改革や具体的な食生活改善をサポートする企業向け健康経営コンサルティング事業12月からスタートさせるにあたり、オーディエンス(参加者)に導入を呼び掛けた。