男性がカギを握る
消費者の健康意識は年々高まり、性別を問わず健康に興味がある人は多いが、美容となると男女に差が現れ、女性中心の市場となる。 美容分野を食品、サービス、化粧品、家電の4つに設定し市場を見てみると6兆5000億円ほどで、その中でもまだ伸びしろがあるといわれているのが化粧品市場だ。化粧品の市場規模はここ数年、2兆5000億円程度で推移しており、内訳を見てみるとスキンケアが市場の約半分、残りの半分をメーキャップ用品とヘアケア用品が占める。今のところ消費のほとんどが女性だ。 ある調査によると男性の6割が外見や肌で気になることがあると回答している一方、男性向けスキンケア商品の市場規模は年間200億円程度で女性向けの10%ほどと少ない。さらに男性向けの美容情報や健康情報を専門に取り扱う媒体はなく、潜在的なニーズがあるにもかかわらず、商品、情報とも供給されていないというのが現状だ。 男性市場の開拓が、頭打ちの化粧品業界の新たな道を打開する一手となる可能性は大いにある。さらにここ数年は、訪日外国人の増加を背景に大都市圏の百貨店やドラッグストアなどが中国や韓国からのインバウンド需要を取り込み、活況を呈している。
販売前から引き合い
繭を原料とした化粧品原材料、化粧品の開発、製造を手掛けるながすな繭(京都府京丹後市、永砂修代表)は、シルクの主成分の一つであるフィブロインというタンパク質のみを抽出し、分子の量を調整できるという独自技術をもち、特殊なスポンジ状のシートを開発し、量産化を進めている。一般的な綿の不織布と比較して、吸水率が高く液垂れしにくいという特徴があり、スポンジの気泡の大きさやバランス、厚さや硬さも自由に制御することができる。まだ、販売前にもかかわらず中国メーカーから仕入れたいという引き合いが来ているという。 シルク由来のタンパク質を主原料としたこのシートは、人体への安全性が高く、細胞の遊走性が高いことが確認されており、傷口に当てると治りが早くかさぶたになりにくい、細胞培養時に細胞が1カ所に集まりやすいなど面白い事例が報告されている。今後はそのプロセスを解明するための臨床試験の実施も予定しており、美容、医療分野での実用化をめざしている。