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起業家ライブラリ

中野 智哉 氏

成功に向かって一歩ずつコツコツ進むだけ。険しい道のりも辛いとは感じない

中野 智哉 氏

株式会社i-plug
代表取締役CEO
ウェブサイトhttp://i-plug.co.jp/
事業内容新卒逆求人サイト「OfferBox(オファーボックス)」シリーズの運営

ブラック企業からニートを経て、経営大学院へ

毎年卒業する大学生の約70万人のうち、約14万人が卒業時未内定、約20万人は入社後短期間のうちに「自分には合っていない」という理由で退職するという。企業側は彼らに先行投資として教育するも、戦力になったと思った途端、退職してしまうことが悩みの種だ。このような企業と学生のミスマッチを解消しようと立ち上がったのがi-plugの中野智哉氏である。

中野氏が大学を卒業したのは就職氷河期真っ只中の2001年。卒業後の6月に求人広告会社に中途入社するが、トイレの時間も日報に書かなければいけないほどのブラック企業。すぐに退職し、10ヶ月のニート生活に突入した。 その後、別の求人広告会社に入社するも、西日本の営業600人のうち最下位という惨憺たる成績だったという。中野氏はそのころの自分を「どん底の状態」と振り返る。 そこから何とか這い上がろうと早朝から深夜まで働き、2年後には平均レベルの成績、7年後にトップクラスの営業成績を上げるようになったが、リーマンショックで仕事が激減。終業後、「やることがないから」と、経営大学院の授業を受講しにいっていたところそこで出会った2人の仲間と起業することになったのがi-plugだ。

 

追い詰められた時に、ふと閃いた事業プラン

i-plugは当初、新卒の人材紹介を事業としてスタートしたが、営業活動は空回り。まったく契約が取れず、「このままでは倒産する。やばい!」と追い込まれていた。そんなときふと閃いたのが『OfferBox』の原型となる事業プランだったという。

OfferBoxは、企業から学生に直接オファーを送ることができる新卒に特化したサービスだ。企業は登録している学生の情報を検索でき、会いたいと思った学生と効率的にコンタクトを取れるほか、内々定まで無料で使える完全成功報酬型というメリットがある。一方、学生は自己PRを文章だけでなく動画や写真・研究スライドなどで掲載することができ、より魅力を伝えやすい仕組みとなっているため、想定外の企業からオファーを受けることができるというものだ。

当時、このようなオファー型×成果報酬という仕組みの人材紹介サービスはなく、「これなら他社と差別化できる」と判断したi-plugのメンバーは、学生200名と企業100社の意見を聞き、そこで得た声をそのまま生かしたシステムをつくりあげた。

 

成功を確信した事業プラン。同じ志をもてる仲間に出会い、逆境も楽しんだ

こうして意気揚々と準備を始めたOfferBoxだったが、いきなり、大きな壁が立ちはだかる。大手人材会社がOfferBoxのリリース直前に同様のサービスを始め、テレビCMや全国紙で大々的にプロモーションを展開し始めたのだ。膨大な資金と組織力を持つライバル企業に対して、i-plugはわずか3人と圧倒的不利な状況。サービスローンチは不安でいっぱいだったが、初日から有名国立大学の学生が208名も登録をしてくれ、「これは、いける!」という確信に変わった。

しかしながら、成果報酬型というサービスの特性上、すぐにお金は入ってこない。一時期、中野氏の資産は会社と個人預金を合わせ、たったの9万円。そんな苦しい状況でありながら、この事業は絶対成功するという自信があった、と中野氏は言う。

「成功という山の頂上に達するまでの道があるとわかっていた。ただ距離が見えないんです。暗闇の中、遠くの小さな明かりに向かって歩いている感じです。どのくらいやり続ければ成功にたどり着くのかがわからないけど、ゴールには近付いているはず。それに、ニート暮らしや求人広告会社で600人中最下位という、どん底を経験しています。そのときに比べれば大したことはないなと思ってましたし、何よりも人生のパートナーともいえる素晴らしい仲間と出会い、一緒に事業を始められたことだけでも非常に運がよいと思っていて。僕以上に恵まれた人間はいないんじゃないかな。僕はもともと楽観主義なんで(笑)」と逆境を楽しむことができるタフさを垣間見せた。

 

学生と企業のミスマッチを解消したい

現在、OfferBoxは新卒向けの求人サイトでは、オファー型に限れば圧倒的なシェアを持つ。4,250社の企業が利用し、学生の登録数は10万名を超え、新卒学生の4人に1人が利用するほどに成長した。このように業界内で一定の地位を確立していながらも、中野氏は現状に満足していないという。

「利用率では大手求人サイト2社に大きく水をあけられていますし、就職活動のミスマッチにより短期間で退職する若者の割合は、20年前とほとんど変わっておらず、市場環境を変えるところまでには至っていません。企業や学生の声を聞いて改善して、シェアを高め、当社の理念である“学生と企業のミスマッチを解消する”ことを追求していきたい」と今後の目標を語った。

 

成功する人と、しない人の分岐点は“行動量”

i-plugで力強く事業を展開をする中野氏だが、起業家の支援に力を注ぐ顔も持っている。そのひとつが、「にしなかバレー」だ。 にしなかバレーとは、西中島近辺に拠点を構え、大阪や関西、日本、そして世界を変えたいという意欲のある経営者が集まる非営利の団体で、そこの代表を務めているという。月数回の交流会や、半年に一度、大型のイベントとしてビジネスプランコンテストを開催し、金融機関の紹介や融資を引き出す事業プラン策定などについても中野氏自ら個別で相談に乗っているそうだ。

そんな中野氏に起業を志す人へのメッセージをもらった。 「成功する人と、しない人の分岐点は“行動量”。失敗が恐いからと悩んでいるだけでは何も生まれません。スタート時の事業は何でもいいので、とにかく動き、多くの人と出会い、自分の考えていること、実行していることを話し、修正しながら動いていくうちに成功するプランは見つかりますよ」 苦しいときも歩みを止めることなく、楽しみながら自身の事業を軌道に乗せた中野氏らしい説得力のあるエールだろう。

 

取材日:2018年7月27日
(取材・文 大橋 一心)

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