fbpx
JP | EN

起業家ライブラリ

泉 征弥 氏

Web3のブロックチェーン技術で透明性の高い公正な社会をめざす

ジオソーシャルプラットフォーム『サイバートロフィー』の開発・運営

泉 征弥 氏

株式会社コンティニュウム・ソーシャル
代表取締役社長
ウェブサイトhttps://www.continuum.social/
事業内容Web3技術を活用したジオソーシャルアプリの開発・運用

2021年11月にカナダ経済の中心地、トロントで設立されたContinuum.Social Inc(コンティニュウム・ソーシャル)。Web3の技術を活用したジオソーシャルアプリを開発・運用し、2023年より日本においても活動を本格化してきた。その船頭を切るのは日本法人代表の泉 征弥氏だ。自社開発アプリ『サイバートロフィー』を開発した背景には、未来社会のあり方を見据えた壮大な野望があった。

トロフィー獲得の楽しみが地域に人を呼ぶ

私たちが開発・運用しているアプリ『サイバートロフィー』は、Web3の技術と位置情報をベースにしたジオソーシャルアプリです。ユーザーは、観光スポットやイベント、社会貢献活動など、その場所に置かれたデジタルトロフィーを収集することによって、そこに行った・参加したという履歴を残し、それを証明することができます。

株式会社コンティニュウム・ソーシャル

ユーザーはその場所で自由にトロフィーを作成し、配布することもできます。アプリにはソーシャルネットワーク機能も含まれており、そのコンテンツや場所など、共通する好みを持つユーザー同士で、コミュニティをつくることもできます。トロフィーを集めると、コミュニティの中で“評判”が高まります。“評判”を高めるために、人はその地域に足を運び、そこで買い物をしたり、食事を楽しんだりします。

株式会社コンティニュウム・ソーシャル

例えば2024年9月には、佐賀県鹿島市の祐徳稲荷神社で開催されたイベント「ナイトウォーク狐の嫁入り」でサイバートロフィーが採用されました。期間内には、エリアの中にイベント限定トロフィーが設置され、参加者はトロフィーの獲得を楽しみました。さらにはトロフィーの獲得数によって、地域で利用できるクーポンが発行されました。

同年11月には、大阪府豊中市の千里ニュータウンの「千里祭り2024」において、サイバートロフィーを『千里祭りGO』としてカスタマイズしたアプリを配布しました。イベント会場や地域のお店や防災拠点にトロフィーを設置し、獲得したトロフィーを表示することで、サービスや情報を受けられる仕組みをつくりました。

どちらのイベントも、アプリが人を呼び込むきっかけをつくり、さらには従来とは異なる人の動きや交流が見られました。このようにサイバートロフィーは、Web3技術の特性を活かして地域に人を呼び込み、新たなコミュニケーションを生み出し、観光の促進や地域経済の活性化につなげることができるのです。

データの信頼性を利用した社会課題の解決

今、インターネット上では、誰もが簡単に情報を発信することができますが、その情報の真偽はとても分かりにくくなっています。例えばSNSや掲示板に投稿された口コミや評価の情報は、投稿した本人が実際にその場所に行き、体験したうえで発信した情報なのか、フェイクなのか、情報の信ぴょう性の判断が難しいのです。

サイバートロフィーでは、ブロックチェーン技術によって、1つひとつのトロフィーに位置と時間の情報が埋め込まれるため、ユーザーは実際にその場所に足を運んで体験した情報しか発信することができません。逆にいうと、発信した情報は本物であることが証明されているのです。

株式会社コンティニュウム・ソーシャル

ブロックチェーン上のデータは、参加者のネットワーク上で管理されているため、透明性が高く、改ざんが極めて困難であることが特長です。この技術を応用して、私たちは“データの信頼性”がカギとなる、さまざまな社会課題の解決をめざしています。

私は以前、カナダに拠点を持つ産業向けブロックチェーンの開発会社の日本代表として働いていました。そこで、アフリカのカカオ生産の現場における児童労働の実態調査と防止のプロジェクトに参加しました。原材料の調達から生産、流通、販売まで、特に複雑な供給連鎖をもつカカオ産業のトレーサビリティがブロックチェーン技術によって向上し、それによって課題を可視化し、人々の意識を変え、購買行動までも変容させる可能性があることを知りました。

その商品がいつどこで誰によって生産されたのか、正しい取引が行われたのか。生産から供給までの履歴が明らかになることによって、より安心・安全で、かつ健全な労働環境によって生み出された食品を、適正な価格で消費者に届けることができるのです。

ブロックチェーンの技術によって、モノやコトの取引履歴、人の行動履歴がきちんと保存・証明され、それが正しく評価されること。サイバートロフィーは、その1つの段階として、エンターテイメントの要素を取り入れたアプリなのです。

「コミュニティ・オウン」という考え方で対価をみんなで共有

これまでのWeb 2.0の技術では、インターネット上のデータはGAFAMなど一部の巨大IT企業のプラットフォームにおいて中央集権的に管理・運用されてきました。それぞれの個人データ1つではほとんど価値を持たないものが、集まれば集まるほど大きな価値を持つのです。大きなプラットフォームを持つ企業は、それを収益源にして成長してきました。

一方で、情報を提供してくれた個人には、その見返りが与えられないままです。株式として資金を投資した人には配当金などの対価があるのに、情報を提供した個人には対価がない。この対価をそれぞれが享受するにはどうすればいいのか。この問題は、今までの経済学では解けなかった問題であり、私たちは、この問題に挑もうとしています。

株式会社コンティニュウム・ソーシャル

サイバートロフィー上において、“ある人がある時にある場所に行ってトロフィーを獲得したという事実”は、位置と時間の情報を含む個人情報です。それによって生まれた利益は、ユーザーみんなのもの。私たちはこの『コミュニティ・オウン』という考え方を大切にしています。その利益をコミュニティのみんなで分かち合うにはどうすればいいか。私たちのアプリでは、コミュニティ内での活動の貢献度に応じて、トークンの付与という形で報酬を発行しています。

サイバートロフィーは、トロフィーの収集というエンターテイメント性を持ちながら、実はその背景には大きな野望と挑戦がある。私たちがめざすのは、Web3技術によってより透明性の高い、公正な社会をつくることなのです。

OIHをこんなふうに活用しました!

2024年には、「Hack Osaka 2024」に初めて出展・登壇しました。出展企業や来場者などと多くの出会いがありました。大阪・関西万博2025では、大阪ヘルスケアパビリオンの『リボーンチャレンジ事業』で「みんなで考える未来の街プロジェクト」に選出され、同パビリオンにも出展します。OIHはこれから日本で事業を拡大していくために欠かせない大きな支えとなっています。

取材日:2025年1月24日
(取材・文 岩村 彩)

一覧ページへ戻る

BACK