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起業家ライブラリ

高原 千晶 氏

アトピー性皮膚炎からの「卒炎」をめざすオンライン皮膚科アプリ『ヒフメド』

通院の負担を軽減し、精度の高い診断と治療を提供

高原 千晶 氏

株式会社Genon(ゲノン)
代表取締役社長
ウェブサイトhttps://genon.co.jp/
事業内容医療・ヘルスケア領域のソフトウェア・サービス開発

株式会社Genon(以下、Genon)は、アトピー性皮膚炎に特化した皮膚科専門オンライン診療アプリ『ヒフメド』を運営するスタートアップだ。長年、皮膚科専門医を受診しているけれど治らない、また通院が困難という患者が登録し、かゆみの炎症から「卒炎」して巣立っていっているという。起業には自身が悩んだ経験も大きかったという代表の高原千晶氏が、事業への想いを語る。

保険診療で安心。通院の負担なく自宅から診療が受けられる

私たちの運営するオンライン皮膚科診療サービス『ヒフメド』には、小さなお子様から大人まで、アトピー性皮膚炎に悩まれている多くの方が治療を受けられています。

現在のユーザー数は約2,700人。「自分に合う治療法を探していた」「話を聞いてもらえる皮膚科医を探していた」、さらには「治すことをあきらめてしまっていた」という方まで、ご友人やご家族からの紹介、また口コミで利用を始められ、多くの方が症状の軽減、また寛解して「卒炎」されます。診療は全て保険診療。事前に健康保険証を専用アプリにアップロードいただくことで、市中の病院と同じ負担率で診療が受けられます。

株式会社Genon

※画像をクリックすると、大きな画像でご覧いただけます。

一般的に皮膚科外来は病院数が少なく、大都市、地方都市に関わらず医療アクセスがあまりよくないという現状があります。オンライン診療であればご自宅から診療や服薬指導を受けることができるので、仕事や子育てなどで忙しい方でも通院時間や待ち時間を気にすることなく受診できます。また、全国どこからでもアクセスできることも大きな利点です。

地方都市や僻地には、近くに皮膚科専門医院がない地域も多くあります。たとえ医療機関の多い都市部であっても、自分に合う治療法になかなか出会えない方もいらっしゃいます。ヒフメドには現在、アトピー治療を専門とする医師が約10名在籍しており、自分に合った医師を選ぶことができます。現在、首都圏在住の方から離島にお住まいの方まで、また小さなお子様から大人の方まで、幅広くご利用いただいています。

地域連携や海外展開を視野に入れながら事業を拡大

最も大切にしていることの1つは、患者と医師がじっくりと話ができる診療時間の確保。ヒフメドでは患者1人につき約10分間を確保しています。これは通常の医院などでよくいわれる「3分診療」の約3倍の時間です。さらに採用する医師も厳選し、専門的知見が豊富なことはもちろん、減薬をめざしてしっかりと寄りそってくれる優しい医師ばかりです。多くのユーザー様がそのことを実感されており、「じっくり話を聞いてもらえた」とご満足いただいています。

株式会社Genon

ヒフメドでは、日々の肌状態や薬の使用状況が医師と共有できる専用アプリを使います。毎日肌の状態を写真に撮り、アップロードして記録。診察では肌症状の変化を、医師と確認しながら納得のいくかたちで治療を進めます。薬は薬局と提携し、診療後に必要な薬を患者の自宅まで翌日配送。通院の負担なく、個別最適化された治療を受けることができるのです。

現在、診療継続率は約80%、患者アンケートによる満足度は約90%と、どちらも高い数値を維持しています。今後はアトピー性皮膚炎だけでなく、乾癬、湿疹、尋常性ざ瘡(ニキビ)など他の皮膚疾患にも対応を広げ、すべての患者様が自分に合った治療を受けられる環境を提供したいと考えています。

また、地域の医療機関や薬局との連携を強化し、オンラインとオフラインを融合した医療提供モデルの構築にも力を入れていく予定です。さらには、アジア・オセアニア地域を中心に、オンライン医療が未整備な国に向けた海外展開も計画しており、2024年にはオーストラリアのヘルスケア分野のアクセラレーター MedTech Actuatorによる「Global Navigator 2024 プログラム」にも参加し、ヒフメドの技術を現地でプレゼン。オーストラリアの医療関係者や大学関係者との有益なつながりを得るなど、精力的に活動しています。

個別最適化された医療をより多くの人に届けたい

事業構想の背景には、私自身が長年皮膚の疾患に悩んできた経験が大きく関わっています。医療機関を訪れた際、たった数分の診療のために待合室で何時間も待った経験や、短い診療時間で医師と十分なコミュニケーションが取れなかったこと、それにより治療の見通しも立ちにくく、通院のモチベーションを保つことが難しいと感じたこともありました。全国の皮膚科の現場はどこもよく似た状況にあり、多くの患者が通院をやめてしまったり、治すことをあきらめてしまったりするという課題があるのです。

株式会社Genon

チームのスタッフと

私の家族は全員が医療関係の仕事に就いており、私自身も医療の道に進もうと考えたこともありました。しかし、たとえ皮膚科医になったとしても、現状の課題は解決するわけではなく、同じような状況を生み出してしまうかもしれない。それならその課題を解決するために事業を立ち上げた方が、より多くの皮膚疾患を抱える人に貢献できるのではないかと考えたことが起業のきっかけでした。

そこで2021年にOIHが運営する大阪市立大学ヘルステックスタートアップス(現 大阪公立大ヘルステックスタートアップス)というプログラムに参加し、ビジネスの進め方や医療分野の知識を専門家から学び、最後の成果発表会(デモデイ)では最優秀賞をいただきました。その後、仲間と共に2022年1月に起業。2023年にβ版、そして2024年6月に正式版『ヒフメド』をローンチしました。

どこに住んでいても、どんなライフスタイルであっても、自分に合った診療が受けられる。これからも私たちは、1人ひとりの声に応えられるような医療の新しい可能性を探り続けていきます。

OIHをこんなふうに活用しました!

起業前からOIHプレイヤー会員として、アクセラレーションプログラムやピッチイベントに参加し、資金調達の道筋を確保していきました。投資家の中には、関西で活躍される現役医師の方も加わってくださり、資金面だけではなく、事業を進めるためのアドバイスやサポートもいただきました。私たちの事業はOIHとの出逢いから生まれ、拡大していったといっても過言ではありません。

取材日:2024年11月22日
(取材・文 岩村 彩)

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