『地域の持続可能な発展に貢献すること』をミッションに、越境EC(海外向け通販)、訪日PRと観光ソリューション、海外とのビジネス進出支援や地域交流サポートという3つの事業を中心に展開している株式会社Velodash Japan(以下、Velodash Japan)。国と地域が今後も持続可能なかたちで発展していけるよう支援をしていきたいと語る代表の関口大樹氏に、その熱い想いを伺った。
台湾での生活経験を基に、現地チームとの協力体制
私たちは大阪を拠点に、主に台湾に向けた越境EC事業の支援、インバウンド観光客向けのPR、海外スタートアップ企業の日本進出支援などを行っている会社です。
Velodash Japanの強みは、創業当初から培ってきた現地チームとの協同体制。たとえ日本の高品質な商品であっても、現地の消費者ニーズや販売のタイミングなどを理解していなければ、市場には受け入れられません。私自身が台湾で長く暮らした経験を基に、現地チームと協力しながら顧客ニーズをきめ細やかに把握することで、よりターゲットを明確にしたPR戦略を立てられることが大きな特長です。
直近では、台湾のネット通販サイトWUZ(ウーズ)と連携し、日本の大手ドラッグストアの越境EC支援を行いました。各SNSでのPR、商品へのフライヤー広告の同梱などに加えて、台北市中心部にあるWUZ実店舗にPOPUPブースを設置し、実際に商品が手に取れるようにしたほか、二次元コードからサイトへの誘導を行いました。
WUZには「都市部アッパーミドル層の女性」という明確な顧客ターゲットがあり、それらの人たちは日本の化粧品やサプリメントにも高い関心を持っています。そこに焦点を絞り、商品を厳選してPRしたところ、高いエンゲージメント率を達成しました。同様に訪日観光についても、現地のインフルエンサーなどを活用しながら、費用対効果の高いPR活動を行っています。
日本と台湾は、歴史的・社会的背景はもちろん、ビジネスにおけるスピード感など商慣習も異なります。現地事情を知りつくした私たちが橋渡し役となることで、両者が信頼関係を築き、気持ちよく取引を行うことができるのです。
国際色豊かな環境で身につけたコミュニケーション力
私は高校生の頃から、日本の伝統文化や製品を海外に紹介するような仕事がしたいと考えていました。大学では法学部で学び、在学中に日本の新聞社主催の「日台文化交流青少年スカラシップ」で受賞したことを機に、台湾の大学院へ進学しました。大学院では地域研究と台湾の歴史を学びながら、国際色あふれる環境の中で言語力や異文化に対する理解、コミュニケーション力を身につけました。
一方で日本が抱える少子高齢化、都市への一極集中と地方の過疎化など、経済的・社会的な問題を目のあたりにし、危機感も感じていました。国外にいたからこそ、より客観的に見ることができたのかもしれません。
日本国内のマーケットが今後ますます小さくなっていく中で、「これからは国外や地域外から外貨を獲得することが、国と地域の持続可能な発展に必要不可欠だ」と考えた私は、大学院在学中に現地のスタートアップ業界に入って本格的に起業準備を始めました。
当時は台湾のIT業界に精通していたので、台湾IT企業の日本へのアウトソーシングを試みました。そこで出会ったのが、台湾のサイクリングアプリ運営会社Velodashです。投資のプロセスなどを経て、2019年頃から日本に試験導入し、日本国内でサイクリングイベントなどを行いました。
その矢先に起こったのが新型コロナウイルス感染症の流行です。イベントの開催ができなくなったことを機に事業を根本的に見直し、2021年に本格的に起業。現在の事業に至っています。
世界の国々と手を取り合ってめざす、持続可能な社会のあり方
台湾と日本をつなぎたいと考える原体験となったのが、大学院在学中に和歌山市の七曲市場で行われたイベント「わかやま夜市」にボランティアとして参加したことです。
台湾の夜市をテーマに行われたこのイベントは、元気のなくなってきた商店街を盛り上げようという、地元の人たちによる手づくりのイベントでした。地方都市が抱える厳しい状況と、そこで暮らす人々の地域愛を肌で感じ、台湾と日本をつなぐことで地域に貢献したいとの想いを強くしました。
和歌山市は「和歌山日台交流協会」という市民団体があるほど台湾との結びつきが強いまちです。わかやま夜市での出会いをきっかけに、私たちは台北市と和歌山市双方の自治体関係者の訪問ツアーのアレンジや通訳、交流イベントでの講演なども行ってきました。
その他、さまざまな分野、地域での日本・台湾間の進出サポート事業を行っています。日本のアート作品の台湾への紹介、訪日観光客に向けたPRや送客、台湾スタートアップの日本進出支援、新聞社や情報誌への記事作成やアプローチなど、多分野にわたる日本と台湾の人・コト・モノの交流を、その案件に合った手法で支援しています。
どこにいても世界中の情報が手に入る今だからこそ、お互いの国が持つ本当の魅力をできるだけリアルに、そしてタイムリーに伝えたいと考えています。
日本には独自の伝統文化や食文化があり、産業においても技術大国です。また、おもてなしや心遣いという、人に対する独特の感性もあります。このような日本の魅力を世界に向けて発信する活動を、今後さらに加速していきます。さらには日台間にとどまらず、ASEAN諸国へ、そして全世界への展開をめざしています。
今後ますます人口減少と少子高齢化が進み、地域格差も広がることが予測される日本。持続可能な発展をしていくためには、自国だけの利益を考えるのではなく、お互いに益となるような関係であることが必要です。世界の国々と手を取り合って、ともに社会の発展をめざしていきたいと考えています。
OIHをこんなふうに活用しました!
OIHには起業前から通い、ピッチイベントやVCの情報を集めていました。会社設立前の2021年12月には「ミライノピッチ」に、創業後の2022年7月には、「うめきたピッチ」に登壇しました。大舞台で事業内容や自身の想いを伝える機会をいただき、その後のピッチやビジネスコンテストに大いに役立ちました。
取材日:2024年8月5日
(取材・文 岩村 彩)