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起業家ライブラリ

松尾 一輝 氏

大阪発!レーザー核融合で世界のエネルギー革命をめざす

松尾 一輝 氏

株式会社EX-Fusion(エクスフュージョン)
共同創設者 兼 CEO
ウェブサイトhttps://ex-fusion.com/
事業内容レーザー核融合商用炉の実用化

株式会社EX-Fusion(以下、EX-Fusion)は日本唯一のレーザー核融合の商用炉(商業用発電炉)の実現をめざす、大阪大学発のスタートアップ企業。レーザー核融合とは、レーザーの圧力を利用し、燃料となる重水素とトリチウム(三重水素)に強力なレーザーを照射することで核融合反応を生み出す発電方式だ。安全でクリーンな核融合技術は、脱炭素社会を実現するクリーンエネルギーとして今、世界で注目されている。

持続可能な社会を実現する新しいエネルギー源

私たちの母体である大阪大学レーザー科学研究所は、半世紀にわたり世界のレーザー技術の研究をリードしてきました。レーザー核融合による商業用発電炉の開発は、持続可能なエネルギーとして世界から注目されており、私たちはその先駆けとして日々研究開発に取り組んでいます。

株式会社EX-Fusion

レーザー核融合実験炉 LIFTの炉心デザイン

核融合エネルギーは、CO2を排出しないクリーンなエネルギーで、特にレーザー核融合は産業用途での応用の可能性も高いとされています。燃料が海水中に豊富に存在し、資源枯渇の課題がないことや、安全、信頼性が高いことも特徴です。重水素と三重水素で核融合反応を起こすのですが、外部から圧力を加えないと反応がないと起きないため、原子力(核分裂)とは仕組みが異なります。

株式会社EX-Fusion

さらに反応の過程で燃料を取り出す必要がないため、高レベルの放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」もほとんど出ません。数年に一度、設備のメンテナンス時に出る古い部品は、放射線レベルも低く、半減期は約12年。100年単位で見るとほぼ無害になるほどのレベルです。

以上のように、『原理的に暴発しない』、『高レベルの放射性物質を扱わない』、『廃棄物がほとんど出ない』という3つの点において、核融合技術は安全性が高く、地震の多い日本に適した発電方法だといえます。

私たちEX-Fusionは核融合が持続可能な社会を実現するために、必要なエネルギー源になるとの信念を持ち、2029年までに技術実証を終え、2035年までに核融合技術実証炉の実現を目標に、研究開発を行っています。

世界のクリーンエネルギーをリードする国に

核融合エネルギーの利点は安全性だけではありません。他にも以下のような利点があります。

1:CO2を出さないクリーンなエネルギー
発生するのはヘリウムと中性子だけで、人体や地球に害はありません。

2:燃料は海水から取れる
核融合の燃料である重水素とトリチウム(三重水素)は海水から無尽蔵に取れるので枯渇の心配がなく、日本のように資源の少ない国でもエネルギーを自給することができます。また資源をめぐって国と国の摩擦も起こりにくくなるでしょう。世界平和にも資する技術とも言えます。

3:供給量が環境に左右されない
太陽光や風力などの自然エネルギーのように、エネルギー供給量が気候条件に左右されません。

4:安定した社会基盤をつくる
核融合エネルギーは価格が変動しにくく、家庭用・産業用の電気料金が安定し、結果として物価も安定します。エネルギーの価格安定は、社会基盤の安定につながります。

株式会社EX-Fusion

世界のエネルギーの消費量は今後さらに増加すると言われています。エネルギー問題は今や世界規模の重要な課題であり、1社だけで解決できるものではありません。

実用化のためには、電力会社や設備をつくる会社など、国内外の多くの企業と協力・提携していく必要があります。また法整備も必要です。日本がクリーンエネルギーの産出国として世界をリードできるよう、実現に向けてより加速していきたいと考えています。

核融合技術とレーザー技術のさらなる可能性を

私は大阪大学でレーザー核融合を研究し、その後研究者としてアメリカに渡りました。商用炉を実現したいと考えるようになったのはその頃です。“そのためには民間企業として取り組むことが効果的だろう、そして起業するならレーザー研究で名高い大阪大学を拠点に”と考えました。

今、世界は脱炭素社会に向かっており、核融合商用炉の需要はますます高まっています。この世界的な流れの中で、国内唯一の民間企業として、核融合商用炉の開発を使命に大阪で起業できたことは、私たちの誇りでもあります。

EX-Fusionという社名には、3つの使命を込めています。一つは『EXTRACT(エネルギーを取り出す)』、核融合商用炉の実現によるエネルギー創出です。これは確実に前に進んでいます。もう一つは『EXPLORE(技術の探求)』、レーザーという汎用性が高い技術を様々な産業で展開しながら、研究を支えられるほどの収益を得ることです。さらに『EXPAND(可能性を広げる)』、核融合を発電で終わらせず、宇宙開発技術や誘雷技術などさらなる可能性を模索していくことです。

株式会社EX-Fusion

「実用化はいつですか?」とよく尋ねられますが、前述の通り、目標を掲げて開発に取り組んでいるものの、確実には分かりません。そういう意味でも今後、レーザー技術で収益を生み出し、商用炉の研究開発をしっかりとサポートできるような体制を構築することが当面の目標です。

これまで多くのみなさまからご支援をいただいており、期待に応えられるよう、今後さらにスピード感を持って、大学や企業と協力しながら研究開発に取り組んでいきたいと考えています。

OIHをこんなふうに活用しました!

関西スタートアップインキュベーションプログラム「起動」に選んでいただきました。関西を代表するスタートアッププログラムに参加することで、産業界・経済界をはじめ、他大学や自治体などの多くの方々に認知され、注目や期待を集めることができました。今後は「大阪発の企業が世界のエネルギー課題を牽引する」を目標に歩んでいきたいと思います。

株式会社EX-Fusion

取材日:2023年9月1日
(取材・文 岩村 彩)

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