2014年12月、20歳の時にシリコンバレーで起業した戸村光氏。「多産多死」と言われるシリコンバレーで現在3期目を迎え、事業は順調に成長している。23歳にして多国籍の社員20名を率いる、若手のベンチャー起業家である。
大阪府堺市で製造業を営む両親のもとで育った戸村氏は、幼いころより中国・東南アジアのコスト力に圧倒される、日本企業の厳しい現状を目の当たりにしてきた。「これからの日本は外貨で稼げるようにならないといけない」とグローバルを意識し始めた時、大阪イノベーションハブでスタンフォード大学から来日していた教授と出会う。シリコンバレーの刺激的な話を聞き、「これだ!」と、高校卒業後すぐに渡米した。
その行動力が大きな機会につながった。チャットワークの山本社長との出会いである。リサーチ職として現場経験を磨きつつ、山本社長の隣でビジネスのやり方を学んだ。「社会の役に立つ起業家になりたい」というかねてからの思いを実現するべく、2012年10月にインターンシップ先を探す留学生と受入企業をつなぐマッチングサイト“シリバレシップ”をリリースした。その2ヶ月後、在シリコンバレーの大企業向けに、コアな情報を提供するメディア事業「HACK JPN」を立ち上げた。グローバル市場で成長するためのキーワードは「教育」と「情報」だと考え、それに特化した。
営業活動はほとんど行っていない。口コミだけで毎月顧客が増え続けていると言う。企業がほしい人材は何か、企業が欲しい情報は何か、それを徹底的に考え、アウトプットすることで支持を拡大しているのだ。
顧客の支持を得る、売れるサービスを提供し続けるというのは当たり前のようで、実は簡単ではない。特に変化の激しいシリコンバレーで「情報」という定性的なものを商品とするためには、高付加価値で、代替不可能であることが必須条件である。それを実現するために、情報処理能力と編集能力を組織として磨き続ける。模倣されにくいビジネスシステムが重要であることは、チャットワークの山本社長から学んだ財産の一つだ。
23歳のベンチャー起業家が描く未来は、「いつか日本に戻って、日本のためになる事業を起こすこと」。シリコンバレーでの挑戦が日本に還元される日が待ち遠しい。
取材年:2017年