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スタートアップで働く人

村上 正樹 氏

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「企業は人が作る。」スタートアップが成長する過程において起業家は多くの仲間と出会い、共に長い道のりを歩みます。スタートアップで働く人は、どのような経緯で企業にジョインしたのでしょうか。

一人一人に焦点を当てるとそこには様々なご縁で繋がった、イキイキと輝きながら働く姿がありました。

不断の努力と仲間との絆で、未踏の地を切り拓いていく

村上 正樹 氏 / マーケティング部 カスタマーサクセスG 課長

BABY JOB株式会社(2018年設立)
在籍年数 6年(前身の株式会社S・S・Mより在籍)
https://baby-job.co.jp/
保育所おむつ定額サービスや、保育士の求人・転職サイト、保育園運営事業など、子育てに関するサポート事業

保育の現場をより良く変える
日本初・おむつのサブスクサービスをスタート

0歳児~5歳児が利用対象となる保育園では、乳幼児を預ける際に紙おむつの準備が必要だ。保護者は紙おむつ1枚1枚に子どもの名前を書いて登園時に持参し、帰宅する際には使用済みの紙おむつを持ち帰るというルールを設ける保育園も数多く存在している。

この紙おむつの持ち込み・持ち帰りは「準備が面倒」「臭いが気になる」「荷物になる」など、子育てと仕事で忙しい保護者にとって大きな負担となっており、一方、保育園にとっても園児ごとにおむつを保管・管理する必要が生じ、業務の煩雑化を招く要因に繋がっており、保護者・施設双方で、大きな課題のひとつとなっていた。

その課題の解決に乗り出したのが、「子育て」を総合的にサポートするBABYJOB株式会社だ。ユニ・チャーム株式会社と連携し、2019年、保育所向け紙おむつの定額制サービス『手ぶら登園』をスタートさせた。

「このサービスは、毎月、保護者が定額料金をお支払いいただくだけで、導入している保育施設へおむつやおしり拭きを直接届けるというもの。保護者の方は毎日紙おむつに名前を書いて準備する必要がなくなるため、手間と負担と荷物が減って、子どもと手を繋いで登園ができる。

同時に、保育士にとっても、おむつの枚数や保護者との貸し借りのやり取りを気にすることがないので、業務の負担軽減にもつながり、その空いた時間で、園児ともっと向き合って接することができる。まさに“双方よし”の、日本初のサブスク型おむつお届け定額サービスなのです」

そう話してくれたのは、BABYJOB株式会社カスタマーサクセスGで課長を務める村上正樹氏。

現在は、新たに契約いただいたユーザーが、スムーズにサービスを運用できるようにサポートするオンボーディングを行っている。

導入説明会の開催や電話やメールでのサポートを行うなど、キメ細やかな対応でユーザーとサービスをつないでいく。『手ぶら登園』サービスの立ち上げの際には、保育園へのPR活動から業務フローの確立、マニュアル資料の作成など、代表取締役の上野氏とともに1から創り上げてきた。

「サービスリリース当初は、“サブスクって何?”というイマイチな反応がほとんどだった」という『手ぶら登園』サービスだが、徐々にその画期的な仕組みが理解され、現在は全国で1,100施設、エンドユーザーは16,000人まで契約が拡大している。

また、優れたサブスクサービスを表彰する『日本サブスクリプションビジネス大賞2020』においてグランプリを受賞するほか、2021年1月には内閣府「アクセラレーションプログラム」の参加企業に推薦されるなど、各方面からも熱い注目を集めている。

信頼できる「人」との出会いが、自らの人生を変えていく

BABYJOB株式会社が設立したのは2018年。株式会社S・S・Mとして少人数保育園「ぬくもりのおうち」を運営していた上野氏が、その実績と経験を活かし、保育業界の活性化をめざす保育士人材サービス企業として立ち上げた。そして、村上氏が上野氏と出会ったのが、BABYJOB立ち上げの少し前。保育士の求人・転職サイト「ベビージョブ」を手伝うことになったのが最初のきっかけだという。

「当時、私は大学3回生で、休学し語学留学から帰国したばかり。ふとした縁で知人から上野さんを紹介されたとき、“スゴイ人だな”と一気に惹き込まれたのを覚えています」

大学では経営学を専攻するものの「特に将来の志望もなく、遊んでいるだけだった」という村上氏。起業を志す学生団体に感化され友人と事業を始めたり、語学力を向上させるために留学したりと、さまざまな可能性に積極果敢に挑戦するものの、確信を持てる未来をなかなかみつけられなかった。

「そんな自分にとって、自らの理想の実現に向けて新たな事業分野を切り開いていく上野さんは、とてもまぶしく見えました。人間的にとても魅力的な人で、周りを巻き込んでいくパワーがすごい。人材サービスについても保育についても、正直、知識もなければ関心もゼロ。それでも、この人となら一緒にやりたい!って思ったんです」

代表取締役の上野氏と

在学中の2015年に株式会社S・S・Mに入社し、BABYJOB立ち上げに向けて上野氏や数人の仲間たちと奔走することに。そうした経緯からか、村上氏のなかでは「スタートアップに入社した」という特別な意識はないという。それと同時に、大手企業や有名企業に就職したいという欲もなかったそうだ。

「私にとって重要なのは、“どこで働くか” “何をするか” ではなく “誰と働くか”。上野さんと出会えたことで、それまでは見えなかった将来への道が大きく拓けていったという感じでした」

何も分からない、誰も教えてくれない
そんな手探り状態が、自らを鍛え成長させる

学生の時に仲間と事業を始めた経験があるといっても、まだ大学生だった村上氏にとって本格的な新規事業の立ち上げは分からないことだらけ。丁寧に指導してくれる上司や先輩の存在がいないなかで、仲間と力を合わせ自分たちで調べ、考え、つくり、やり直すという手探り状態だったと当時を振り返る。

「一般的には、入社したらまずは新人研修として会社のルールや社会でのマナー、基本的な業務知識について学ぶと思いますが、まだ組織が確立していない新しいスタートアップではそうした学びも自分たちでやらなければなりません。

一番辛いと感じたのは、達成すべき目標はあるのに、その方法論がまったく分からなかったこと。暗闇のなかで、それでも前に進まないといけない状況が本当にしんどかったですね」

辞めたい――という言葉が何度も頭をよぎる。それでも村上氏を踏み止まらせ、前進する力を与えてくれたのが、上野氏をはじめともに頑張る仲間たち、「人」の存在だったという。

「苦労して成し遂げた成果だからこそ、それを仲間と共有できる喜びは言葉では表せないほど。それに、自らで悩み四苦八苦しながら勉強していくので、どんどん事業の意味や取り巻く環境が見えてきて、自身の能力やできることも拡大していきました。わずかな期間に大きく成長できましたね」と笑顔を見せる。

2019年に日本初となるサブスク型おむつお届け定額サービス『手ぶら登園』がスタートするが、ここでも村上氏の試行錯誤は続く。

「保育園の多くは変化を嫌う傾向にあり、営業開始当初は、新しいサービスに対してネガティブな意見も多くいただきました。自分自身も“本当に必要とされるサービスなのかな?”という一抹の不安がありました」

ところが、2020年に入り新型コロナウイルス感染症拡大で、時代は大きく動いていく。衛生管理に対する意識向上や現場での業務負担の軽減化を背景に、『手ぶら登園』はたちまち注目を集めた。

また、スタートしたばかりで拠点のないBABYJOBにとって、全国の商圏に向け一気にアプローチできるオンラインコミュニケーションの拡大は、むしろ追い風となっていったのだ。

「一番大きく変化したのは私自身の意識かも知れません。最初は確信の持てなかった事業でしたが、PR活動を通して多くの保育園や保育士さんの声を聞くのはもちろん、自分が親になり子育てに関わるようになって、事業への自信と誇りが生まれましたから」と村上氏。無関心だった保育業界を学ぶために、保育士資格を取得し保育の現場を経験したことも活きているようだ。

自身も結婚し、3人の子どもの親となった村上氏。「若い時は育児とか保育とか無縁の世界でしたが、いざ保護者側の立場に立ってみると、改めてこのサービスの魅力や必要性を実感します」と笑う。

一緒に頑張りたいと思える仲間がいる
それこそがBABYJOB最大の強み

今やBABYJOBのメイン事業として大きく成長した『手ぶら登園』。新規契約が増えるタイミングの翌2022年4月には、ユーザー数3万~4万人をめざしている。

立ち上がりの苦労を経て軌道に乗りはじめた『手ぶら登園』だが、まだまだ村上氏の奮闘は終わらない。

今後はさらなるマーケットの拡大と、より良い運営を実施していくための人材育成という課題が待っている。しかし、そうした苦労もまた「仲間となら頑張れる」と、村上氏は話す。

「当社の強みは、何といっても他にはない画期的な事業であること。これまで保育所をサポートするサービスや保護者向けのサービスはありましたが、保育所、保護者、そしてサービス提供者である当社すべてにメリットがあり、みんなが幸せになる点が今までにない優位性だと思います。

そして、私にとっての当社の最大の魅力は、やはり“人”。子育てを頑張る保護者をサポートしたいという熱い想いはもちろん、仲間に対しても優しく、困っているメンバーがいれば自然に助け合う環境が育っていることが、一番の自慢です」

上野氏と出会い、無我夢中で走り続けてきた約6年間。「まだまだ何が起こるか分からないのが、スタートアップの難しいところでもあり面白いところ」と語る村上氏は、笑いながらも、その目はしっかりと未来を見据えている。

チームのみなさんと

スタートアップへのイメージ

<Before>

  • ●組織が未完成で何をするにも大変そう
  • ●すべてを1からつくっていける
  • ●目標を持ち自立心旺盛な人が向いている職場

<After>

  • ●大変だからこそ学びが多く成長につながる
  • ●誰にも指図されず自分の責任で行動できる
  • ●甘えを捨て成長をめざしたい人こそ向いているかも

自社のイイトコロ

たとえば定期的にミーティングを開催したり、社内ルールを決めなくても、自然発生的にコミュニケーションを図ったりお互いに助け合うことができるのが当社の特徴。温かく優しい人が多いから職場の雰囲気も明るくて、どんな困難も頑張ろう!と思えます。

スタートアップで働こうと考えている人へ

一般的に、自分のやりたいことや目標が明確な人がスタートアップに向いていると思われがちですが、実は、将来がまだ見えないという人にこそ来て欲しいというのが私の考えです。誰も教えてくれない環境では、自分自身でやるしかありません。だからこそ自らの知識やスキルを増やし、可能性を拡げることが可能。出来ることが増えれば、きっと本当にやりたいことが見えてくるはずです。

スタートアップで働こうと考えてる人
スタートアップで働こうと考えてる人

2021年7月15日 取材

(文:山下満子)

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