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スタートアップで働く人

伊藤 夏美 氏

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「企業は人が作る。」スタートアップが成長する過程において起業家は多くの仲間と出会い、共に長い道のりを歩みます。スタートアップで働く人は、どのような経緯で企業にジョインしたのでしょうか。

一人一人に焦点を当てるとそこには様々なご縁で繋がった、イキイキと輝きながら働く姿がありました。

自らのチカラで新たな世界を築いていく、
未知に挑む楽しさがここにある

伊藤 夏美 氏 / 共同創業者兼CMO

株式会社ウォーターデザインジャパン(2020年設立)
在籍年数1年3か月
https://www.waterdesign.tokyo/
UFBデュアル等、ウルトラファインバブル生成機の販売、それらに付帯する業務

世界初の特許技術を武器に、新たなビジネスの可能性を切り拓く

世界60カ国、約5万社のスタートアップ企業が自らの事業の未来を駆けて、英語による熱いピッチバトルを繰り広げる、世界最大級のグローバルピッチコンテスト・カンファレンス「Startup World Cup」

その大阪予選「Startup World Cup 2020 Osaka Regional」が、2020年2月、大阪グランフロント北館4階ナレッジシアターで開催された。

並み居る強豪たちを押さえて見事大阪予選を勝ち抜いたのは、世界で初めて水道器具認証を受けた特許技術・ウルトラファインバブル生成ノズル『UFB DUAL』の株式会社ウォーターデザイン。登壇者は、株式会社ウォーターデザインジャパンの伊藤夏美氏だ。

写真中央、大阪予選の優勝カップを受け取る伊藤氏

ウルトラファインバブルとは、今、世界から注目を集めている日本発の技術であり、今世紀のイノベーション技術のひとつ。

1マイクロメートル(1/1000mm)以下のナノメートル(nm)単位の目に見えないほどの極微細な気泡がUFB(ナノバブル)と呼ばれ、その優れた洗浄力や滅菌、酸化の抑制、植物の育成促進、保湿・保温といったさまざまな効果によって、環境、農業、食品、水産業、洗浄、産業、美容、医療など、幅広い分野においての応用が期待・実用化がされている。

「このウルトラファインバブル(以下、UFB)を発生させる装置は現在いくつもありますが、これまで、泡を発生させる際に外気を取り込むことによって空気中に含まれる不純物や菌、ウイルスが混入するリスクがあることや、構造上どうしても水圧・水量が落ちてしまうなど、多くの課題がありました。

『UFB DUAL』は、特許を取得した独自の機構によって水圧・水量減を大幅に解消し、外気を使わず水中の酸素を使用する泡の生成法によって高い安全性を実現。

UFB生成機器として世界で初めて水道機器認証を取得した、水道に取り付けられる唯一の製品なのです」

と伊藤氏は語る。

CMOとしてマーケティング業務全般を担い、UFB DUALの技術や製品の認知度を高めるためにピッチイベントにも積極的に登壇。現在はジェトロ(日本貿易振興機構)を通して、海外展開の可能性を探っているところだ。

「『UFB DUAL』は、これまでの装置とはまったく異なるオンリーワンの技術。

そのため、様々な産業分野で応用できる可能性を秘めているんです。これまでにはなかった未知のフィールドを開拓していくような、刺激的な日々を送っています」

企業規模や知名度よりも、自分のなかにある興味や関心を求めて

現在26歳の伊藤氏は、神奈川県生まれ。幼少期は日本と台湾で過ごし、大学はアメリカ・ペンシルバニア州に進学し経営と芸術を学び学位を取得。

その経歴から日本の大手や有名企業へ就職できるだろうという周囲の期待をよそに、伊藤氏が選んだのはある小さなIT系スタートアップ企業だった。

「大学を出たら大手企業に就職。そんな“当たり前”に興味を持てなくて、自分なりにいろいろ情報を集めていたんです。

そのなかで見つけたのが、当時Facebookでバズっていたオフライン翻訳機の動画。

もともと、社会的な問題を解決できるソリューションに携わりたいという想いがありました。

その翻訳機を知った時、世界のなかの言語の壁という問題を解決できるかも知れないと俄然興味が湧いたのです」

新卒は採らないという会社に門前払いを受けながらも、諦めず何度も訪問してまずはインターンとして活躍のチャンスをゲット。

その会社で海外進出の業務に携わり、その後、外資系ベンチャー企業の日本支社にマーケティングマネージャーとしてヘッドハンティング。

「とくにスタートアップに興味があったわけではなく、自分の興味や関心の赴くままに動いた結果、スタートアップを渡り歩いていました」と当時を振り返る。

マーケティング業務でシリコンバレーやサンフランシスコに出向くことが多かったという伊藤氏は、この時期、海外投資家をはじめさまざまな国籍の人と出会う。

「その時に言われたのが、日本の技術や製品には非常に面白いものがたくさんあるのに、マーケティングや海外戦略が不十分で上手く広まらないことが多いよね、ということ。

確かに、ノーベル賞受賞者の多さが物語っているように、日本には優秀かつユニークな技術やアイデアがまだまだたくさん眠っているはず。

それらに光を当て世界に広めていけば、もっと世の中に貢献できるんじゃないかなと考えるようになりました」

そんな伊藤氏の心をとらえたのが、株式会社ウォーターデザインが開発を進めていたUFB生成ノズル『UFB DUAL』だ。UFBについてはほとんど知らなかったという伊藤氏は、その日本発のイノベーション技術に衝撃を受ける。

「日本発祥の技術なので国内のπは大きいけど、世界での認知度はまだまだ低い。でも、深刻な水問題を抱えているのはむしろ海外なんです。

この技術があれば、本当にたくさんの人の助けになるはず。そう確信しましたね」

企業規模や地名度ではなく、世の中に貢献するやりがいをひたすら求めていた伊藤氏。「素晴らしい技術を、自分の手で世界に広めたい」という情熱が、自らを突き動かし、新しい一歩をスタートさせた。

未知の世界や刺激的な人との出会いを通して、人間として成長していく

世界初の特許技術『UFB DUAL』で世界に打って出るために、2020年3月、『UFB DUAL』の販売など海外展開を見据えた株式会社ウォーターデザインジャパンを設立。

伊藤氏は共同創業者兼海外進出を促進するCMOとして、世界を舞台にビジネスチャンスの創出に邁進する。

「世界各国からたくさんのお問い合わせをいただいていますが、最近ではインド、マレーシア、タイ、シンガポールなど東南アジアの企業が多いですね」

と伊藤氏。

それらの企業を1つひとつ調査しながら、的確なソリューション提案につなげていくための情報収集や商談など、やるべき業務は山ほどあるという。

「これまでもスタートアップで働いてきて、新しい技術やサービスで社会の問題を解決していく楽しさややりがいを感じてきましたが、『UFB DUAL』が持つ可能性は今まで以上。

たとえば、大学などの教育機関を連携したり、専門の研究機関や開発部門にアプローチしたり、ただ製品を提供するだけに止まらない新たな業務の広がりを実感しています。

道なき道をゆくまさに茨の日々であり、毎日が勉強の日々ですが、刺激的で充実した時間を過ごせるのはスタートアップならではの魅力でしょうね」

そしてもうひとつ、スタートアップで働くことの魅力があるという。それが、「人」だ。

「もちろんプロダクトやサービスもそうなんですが、その周りにいる人たちがすごく面白い。

変わっているというか、世間一般の“常識”の枠にははまらない自由さやオリジナリティがあって、そんな人たちとの関わりのなかで私自身良い刺激や影響を受けて、人間としての幅を拡げられていると感じています」

しかし、世界で戦っていくうえで、時にはスタートアップだからこその苦労を感じることも。会社の認知度も低く、今までにない新しい技術や製品は相手の理解と信頼を得るまでに時間がかかるからだ。

「でも、頑張れば頑張った分、必ず状況は拓けていくし、やった分だけ成果としてダイレクトに反ってくるからやりがいは大きいです。

すでに出来上がった世界よりも、今までにない新しい世界を築きあげていくのがスタートアップの最大の魅力。クリエティブなマインドを持つ仲間たちに囲まれて、着実に成長しています」

と笑顔を見せる。

「Startup World Cup 2020 Osaka Regional」の開催終了後、記念撮影

自分の「今」が「未来」へとつながっていく確かな喜びを実感

株式会社ウォーターデザインジャパンはスタートを切ったばかり。UFB DUALの技術をしっかりと広めマーケットを開拓していくというCMOとしての使命も重要で、伊藤氏が果たす役割はますます大きくなっている。

「さまざまなビジネスチャンスが考えられますが、未だインフラ整備が不十分で水問題を抱えている国や地域で、『UFB DUAL』を使ってもらえる状況をつくるのが目下の目標のひとつ。

また、コロナ禍では部屋ごとの空調管理の必要性からフィルタレーション(ろ過機)が重要視されるようになるでしょうし、そうなると長期的なゴミ問題なども懸念されます。

そうした環境面も含め、予防治療という分野においても『UFB DUAL』の可能性を見出していきたいですね」

と、その目は激変する時代の動きをしっかりと見据えている。

そんな伊藤氏のもとには、最近やり始めたというSNSを通じて、同じ世代や学生などの若い女性たちから、質問や共感のメッセージが届くという。

「私はこれまで、自分の好きなこと、興味や関心のある方向に突き進んでいて、それが自分にとっての“普通”なんですけど、そんな生き方に刺激を受けてくれる人たちがいることに少し感動します。

私の経験が少しでもアドバイスになって、スタートアップや新しいフィールドで活躍する人や女性起業家が増えていけば、これほど嬉しいことはありませんね。

最初から完璧を求めるのではなく、最初は80%でも良い。やりたいことがあったらトライアンドエラーの気持ちで、まずは思い切って飛び込んでみて」

と熱いエールを送ってくれた。

スタートアップへのイメージ

<Before>

  • ●組織として未完成でつねに忙しく働いている
  • ●自分の研究に没頭してコミュニケーションが取りづらい
  • ●“技術オタク”のような、ちょっと変わった人が多い

<After>

  • ●仕事は多いが場所はオフィスにこだわらず自由なスタイルで働ける
  • ●常にオンラインでつながっていて、コミュニケーション環境はバツグン
  • ●コミュニケーションスキルが高く、面白い人が多い

自社のイイトコロ

当社の一番の魅力は、フレキシブルなマインドを持っていること。新しいアイデアには柔軟に耳を傾けて、良い内容であれば早速行動。発案者に率先して動いてもらうので、いろんな経験ができるはず。自分の考えでガンガンやりたい人には、ピッタリの職場です。

スタートアップで働こうと考えている人へ

自分のやりたいことがあったら、とりあえず行動することが重要です。今まで学生の方から相談を受けて感じたのは、行動する前から失敗を恐れたり周りからの評価を気にしすぎて一歩が踏み出せない人が多いということ。失敗したら、やり直せば良いだけ。まずは勇気を出していろんなことにトライしてください。

スタートアップで働こうと考えてる人
スタートアップで働こうと考えてる人

2020年12月18日取材

(文:山下 満子)

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