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スタートアップで働く人

樫原 理映子 氏

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「企業は人が作る。」スタートアップが成長する過程において起業家は多くの仲間と出会い、共に長い道のりを歩みます。スタートアップで働く人は、どのような経緯で企業にジョインしたのでしょうか。

一人一人に焦点を当てるとそこには様々なご縁で繋がった、イキイキと輝きながら働く姿がありました。

専業主婦から入社6年で本部長に、
女性に勇気を与える存在になりたい

樫原 理映子 氏 / 執行役員、ウィメンズヘルス推進本部 本部長

株式会社ネクイノ(2016年設立)
在籍年数6年
https://nextinnovation-inc.co.jp
婦人科特化型オンライン診察プラットフォーム「スマルナ」の提供、インターネットを用いた遠隔医療サービスの企画・運営、システム開発・運営

婦人科領域に特化したオンライン診察プラットフォーム「スマルナ」

ピルのオンライン処方アプリ『スマルナ』を開発・運営する株式会社ネクイノは、フェムテック分野で大阪を牽引するスタートアップだ。『スマルナ』は、おもに生理や避妊に関する悩みをもつ方々と、医師や薬剤師などの医療専門家をつなぐ、婦人科領域に特化したオンライン診察プラットフォーム。自宅からスマホで、ピルの相談・診察・処方を受けることができ、指定の場所にピルを届けるほか、助産師や薬剤師による無料相談も提供している。

2022年5月現在、『スマルナ』のメディカルコミュニケーション数(オンライン診察回数・医療相談数・ピル配送数などの累計)は約200万件、アプリのダウンロードは累計80万件を突破。無料の『スマルナ医療相談』の1日平均相談数は464件と、ユーザーを増やし続けている。

低用量ピルは、毎日決まった時間に服用することで99.7%の避妊効果が期待できることはよく知られているが、その他の効能として生理不順・生理痛・PMS(月経前症候群)などの改善や、ニキビの治療・月経困難症・子宮内膜症などの治療にも使われていることは、日本ではあまり知られていないのが実情だ。

「『スマルナ』は、“低用量ピルを飲むことで、生理中のイライラや生理痛が軽くなって気持ちが安定し、物事がうまく進み、生活がラクになって、とても助けられた。だからピルのイメージを払拭して、もっと多くの女性に知って欲しい!”という一人の女性社員の言葉からはじまったサービスです。このサービスを初めて聞いた時、必ず世に受け入れられると思いましたね」

そう話すのは、ウィメンズヘルス推進本部 本部長 樫原理映子 氏だ。『スマルナ』のサービスを開始する1年前にネクイノに入社し、2022年6月よりウィミンズヘルス推進本部 本部長に就任。現在『スマルナ事業部』と新たにスタートした、トイレで生理用ナプキンを無料で受け取れるサービス『トレルナ事業部』を統括する。

ネクイノのミッションは『世界中の医療空間と体験をRe▷design(サイテイギ)する』ことである。
『スマルナ』による診察のデジタル化にとどまらず、病院以外の身近な場所で臨床検査ができる検査のデジタル化、マイナンバーカードと健康保険証をリンクさせ、各医療機関で共用できるセキュアなサービスの実施『ID Relation』を包括するPHR(Personal Health Record)を中心とした医療DXをめざしている。

ネクイノと出会い諦めていたキャリアを再スタート

大学院で情報学科を専攻した樫原氏は、新卒で大手企業に入社。ICカードの技術営業職に従事した。結婚して、第一子の出産時には育児休暇を取得。1年後に職場復帰をした。その後、第二子の出産を機に退職してからの4年間は、専業主婦として子育てに専念した。

本来の性格は保守的だという。大企業での終身雇用が希望で、チャレンジ精神はまったくなかった。

「憧れの専業主婦になり、退職したときはハッピーでした。でも、子どもを連れて歩いているときに、バリバリ働く同世代の女性を見ると、正直うらやましく思っていました。“私はこのままでいいのか。いや、もう一度働きたい!”という気持ちが沸々と湧き上がってきました」

しかし、どこにでもチャンスは転がっているわけではなかった。一度キャリアを止めてしまった女性が再就職先を見つけることはとても難しい。ましてや、小さな子ども2人を抱えた状態で社会復帰することに自信がもてなかった。それでもなんとか調剤薬局の事務職に就き、正社員として1年半働いたが、やはり“自分が培ってきた知識やスキルを活かして社会貢献したい”という想いは強くなるばかりだった。ある日、“もう少し過去の経験が活かせそうな仕事を紹介してもらえたら”と考え、恩師のいる大学の研究室を訪ねた。

そこで恩師から、オンライン診察サービスを事業とするスタートアップが起ち上げメンバーを探しているという話を聞き、とにかくアタックしてみようと紹介してもらったのが、ネクストイノベーション株式会社(現 株式会社ネクイノ) の代表取締役 石井健一 氏だった。

当時のネクイノは起業直後。スタッフはまだ数名程度で、プログラム開発のできる人材を探していた。樫原氏はプログラマーとしての経験はなかったが、石井氏から開発のポジションを勧められた。 “このチャンスを逃したら自分のキャリアを積むことができない” と思い、「とりあえずやらせてください。できないとわかれば辞めます」と伝えると、「それでもいいから」と採用が決まり、社員第一号となった。

会社の就業形態がフルリモート・フルフレックス制なので、1年間は大学に通い、恩師に教えてもらいながらプログラミング業務を行なった。アプリはつくれるようになったが、より本格的な業務に携わるためには実力的にも時間的にも厳しい状況だった。会社を辞める覚悟で「子ども2人の育児と、未経験のプログラミング業務を両立するのは難しい」と石井氏に伝えると、予想外の言葉が返ってきた。

「じゃあ、マーケティングチームで働いたら? 1か月休んでから返事をくれたらいいよ」

このときの石井氏の言葉について、「ネクイノの代表が、私の母としての状況も理解してくれる石井でなかったら、そこで離脱していました」と樫原氏はいう。“環境を変えて働けるチャンスをもらったんだからやるしかない”と奮起し、マーケティングチームでデータ分析に携わることになった。

代表取締役 石井氏と

当時について、石井氏に尋ねてみた。

「アーリーステージの一番の悩みは、スタッフ不足です。開発のポジションが難しいといっても、1年のうちに色々なものを見聞きした経験は何にも代え難い。ならば、他のポジションでチャレンジしてもらえばいいだけのことです。多くの人が能力ではなく付帯条件で評価されてしまっていますよね。本人の能力とは関係なく、子育てのために企業を離れるとキャリアが積みにくい現状があります。ネクイノでは、その人が働けない理由をフルリモート・フルフレックスなどで排除し、働き続けられるしくみをつくっています」

「何もできない」と諦めかけている女性に勇気を与える存在になりたい

2018年に『スマルナ』がリリースされると、またたく間にユーザーが急増した。サービスが成長していくことが嬉しい反面、業務の量も激増。スタッフ総出で深夜までユーザー対応などに追われる日もあったという。同時にマーケティング業務が始まったものの、分析するデータの蓄積はなく、まずは社内に点在するデータをかき集めては、ゼロから手入力する作業から始まった。

「ネクイノでは、開発からマーケティング、カスタマーサポートまで経験しました。経営企画部では、会社全体の数字を見るようになり、企業の価値や成長について勉強させてもらいました。そしていま、“これまで積み重ねてきた自分のキャリアを注力できるポジションに就けた”という感じです。女性が6年間という期間で重要ポジションにまで駆け上がることができたのは、スタートアップならではだと思います」と樫原氏は言う。

次第に社内のメンバーが増え、社員数が30人・50人・100人と増えるたびに課題が生まれ壁にぶちあたると言われるなか、ネクイノは順調に100名規模の企業にまで成長した。入社6年目でウィメンズヘルス推進本部の本部長に就任した樫原氏は、『スマルナ』『トレルナ』2つの事業部のマネジメントを担う責任者として、「会社が必要としてるなら、どんな仕事を任されても自分の力を最大限に発揮したい」と意欲を見せる。

「私の場合は、がむしゃらに働くなかで、“やればできる”という自信が生まれました。4年間専業主婦をした時点で、“私のキャリアは終わったも同然”だと思っていたんですが、ネクイノに入ってイノベーションが起きたんです!(笑)専業主婦になってキャリアを積むことを諦めた女性や、“私にも社会でなにかできるはず”という思いを募らせている女性は世の中にたくさんいる。そういう女性たちに、“一歩踏み出せば違う人生が待っている”と知って欲しい。“何もできないと諦めかけている女性に勇気を与える存在になりたい”と思っています」

樫原氏の最終的な目標はネクイノが永遠に存続すること。
「女性1人ひとりが健康的な毎日を過ごし、自分らしい人生を選べることが当たり前になる世の中をつくっていきたい」と闘志を燃やす。

PRチーム 部長の豊倉氏、後藤田氏と

スタートアップへのイメージ

<Before>

  • ●ユニークな人の集まり
  • ●大企業で得られない経験を得ることができそう
  • ●チーム一丸となって働ける

<After>

  • ●世の中になくてはならないユニークな存在
  • ●キャリアスピードが速い
  • ●会社やサービスへの愛が圧倒的に深まる

自社のイイトコロ

フルリモート・フルフレックス制なので、子育て中の女性でも働きやすい環境です。従業員が100名になった今も、悩みに耳を傾けて、個人のパフォーマンスが最大限に発揮できるように考えてくれる代表がいます。

スタートアップで働こうと考えている人へ

急速に成長する事業において、自分が成長できる機会を与えてもらえる。そして、実際に猛スピードで成長する事業や自分を実感できるチャンスは、スタートアップやベンチャーにしかありません。少しでも興味がある人は、ぜひチャレンジして欲しいです。悩む時間があるなら、一歩前に足を踏み出して行動してみてください。私のように人生が変わるかもしれません。

スタートアップで働こうと考えてる人
スタートアップで働こうと考えてる人

2022年6月17日取材

(文:花谷知子)

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