
開催概要
起業準備中を含むシード期のスタートアップを対象に専門的な支援を提供し、事業成長の加速をめざすプログラム、SIO(スタートアップ・イニシャルプログラムOSAKA)。2025年1月26日、5か月にわたる本プログラムを通して、ビジネスプランに磨きをかけてきた12名の起業家たちによる成果発表会が行われました。
【基調講演】
成果発表の前に、今回のコメンテーターでもあるakippa株式会社 代表取締役社長 CEOの金谷元気氏による基調講演が行われました。 講演のテーマは、「番狂わせの起業法」。起業から現在に至るまでのさまざまな苦難をお話しいただきました。


基調講演の様子
最後には、「困りごとを解決する企業が世界一になれば世の中は必ず良くなる。だから私たちは世界一のモビリティプラットフォームをめざす」という力強いメッセージも。さらに、これから登壇する起業家たちに「今後の飛躍を楽しみにしています」と、温かいエールもくださりました。

【コメンテーター紹介】
次に、今回の事業ピッチに対して質疑応答および講評を行うコメンテーターとして、以下3名が紹介されました。

マネックスグループ株式会社 取締役兼代表執行役社長 CEO 清明祐子 氏

akippa株式会社 代表取締役社長 CEO 金谷元気 氏

株式会社ABAKAM 代表取締役 エクイティデザイナー 松本直人 氏
【SIOアクセラレーションプログラム2024 参加者12名による事業ピッチ】
そしていよいよ、今回のメインプログラムである事業ピッチが始まりました!
① 株式会社FoodFul 代表取締役 CEO 作野 充 さん
子育ての不安を抱えるママパパと専門家をマッチングするプラットフォーム『チルディッシュ』

株式会社FoodFul 作野充さんのピッチの様子
「すべての人が誰かに子育てされて今に至っています。この子育てを新たなステップに導き、世界中のすべての家族が愛を育める環境を私たちが築きます」と大きなビジョンを語り、『チルディッシュ』をプレゼンしたトップバッターの作野さん。

金谷氏からは、「有料サービスが充実していけば、さらに良いプロダクトになると思う」とアドバイスが贈られ、松本氏からは、「マネタイズポイントにしっかりと知恵が絞られていて、類似サービスとの差別化につながっている」と評価されました。
② 株式会社RIGHTHAND 代表取締役 CEO 菅原 右敦 さん
次世代の部活マネジメントアプリ『RIGHTHAND』

株式会社RIGHTHAND 菅原右敦さんのピッチの様子
続いて登壇した菅原さんは、「教育とスポーツビジネスに携わってきた強みをいかし、生徒と保護者、学校、指導者にベストな環境を提供していきたい」と、自身のビジョンを熱く語りながら『RIGHTHAND』を発表しました。

菅原さんの発表に対し、コメンテーターの清明氏は、「私も部活の外部委託や教員の負担軽減の実現性が気になっていたので、興味深く聞かせてもらった。AIによるデータ活用なども視野に入れてみては」とアドバイス。金谷氏からは、「OB・OGのコミュニティも巻き込めば、より使いやすいサービスになると思う」と新たな視点が示されました。
③ 合同会社ReeveSupport 代表 三澤 由佳 さん
最短1分で手配が完了する、介護タクシー配車アプリ『のれるんです』

合同会社ReeveSupport 三澤由佳さんのピッチの様子
次に登壇した三澤さんは、「自分が80歳になったとき、自分の足で歩けているでしょうか?」という問いかけからピッチスタート。最後は、「2,000万人の高齢者の外出を促進し、介護タクシーの新しい働き方を創ります」という大きなビジョンを掲げ、『のれるんです』の発表を締めくくりました。

清明氏は、「このサービスは必要。供給側を増やしていく必要があると思うので、仲間を広げて頑張ってほしい」とエールを贈り、金谷氏も、「車両台数が勝負のカギになると思うが、質を担保しつつ数を増やす施策を考えている点がいい」と評価しました。
④ 旅マエ inc. 代表取締役 CEO 平野 貴大 さん
日本の感動体験を通して、インバウンド観光客と日本人英語学習者を結ぶサービス『Marigo』

旅マエ inc. 平野貴大さんのピッチの様子
4番目に登壇した平野さんは、「旅行とは新しい出会いと感情の動きである」というスローガンのもと、中国旅行で感じた言葉の壁や英語学習の継続の難しさなど、自身の体験を交えながら『Marigo』を紹介しました。

清明氏は、「自動翻訳が発達している中で、英語学習者とインバウンド旅行客のどちらに重点を置くかでサービス内容が変わってくるので、精査してほしい」と指摘。金谷氏は、「旅行は頻繁にするものではないので、サブスクとは相性が悪いかもしれない。課金モデルをブラッシュアップしていけば、もっと良いサービスになる」と具体的なアドバイスを贈りました。
⑤ デイジーヘルステック株式会社 代表取締役 佐々木 峻介 さん
会話を通して、個人に寄り添った健康的なダイエットを実現するパーソナルAIヘルスケアエージェント

デイジーヘルステック株式会社 佐々木峻介さんのピッチの様子
「ダイエットの永遠の課題である“続かない”の根本原因は、本音が言えないことに起因するミスコミュニケーションではないか?」という問題提起から始まった、佐々木さんの事業ピッチ。

言語に依存しないサービスのため海外展開も可能、という佐々木さんのビジネスプランに対し、金谷氏は「トレーナーからのリアルな指導もオプションに入れると、より良いサービスになる」と期待。また松本氏からは、「顧客の成功体験をもっと魅力的に表現できれば、さらに差別化できる」という助言が贈られました。
⑥ 株式会社VelodashJapan 代表取締役 CEO 関口 大樹 さん
台湾と日本をつないだ事業創出、スタートアップとの事業提携、日本企業の台湾進出支援、インバウンドPR、越境ECを実施

株式会社VelodashJapan 関口大樹さんのピッチの様子
子どもの頃から国際経済に興味を持ち、学生時代に台湾との交流を通じてそのポテンシャルの高さを感じたという関口さん。「台湾からの投資は日本の地域経済に大きなインパクトを与え、地方の衰退や空き家問題を解決する立役者となる」と、自身の事業の意義をアピールしました。

清明氏は、「サステナブルな事業にするためには、日本の不動産所有者の理解や地域住民の安心も必要」と指摘し、松本氏は、「為替リスクなどへのヘッジ策もビジネスモデルに組み込むことと、自社のポジショニングをもっと明確に訴求することが差別化につながる」とアドバイスを贈りました。
⑦ 株式会社CrestLab 代表取締役 CEO 坂東 裕太 さん
AIとともに創る新しいアニメーション制作サービス『ANICRA』

株式会社CrestLab 坂東裕太さんのピッチの様子
「私自身もマンガを描くクリエイター」と語る坂東さんは、「一緒にコンテンツ産業の未来を切り拓いていきましょう!」と、熱量高く『ANICRA』についてのピッチを披露。

松本氏は、「このサービスが普及することで、アニメ制作の世界がどのように変わるのかを定量的に表現できれば、もっとインパクトを与えることができる」と期待を寄せ、清明氏は、「アニメが好きな気持ちと、この事業にかける熱意が伝わってきて、非常に魅力的なピッチだった」と賛辞を贈りました。
⑧ WorkHive株式会社 代表取締役 照屋 和紀 さん
ノンデスクワーカー向け転職AIエージェント

WorkHive株式会社 照屋和紀さんのピッチの様子
新卒からずっと人材畑を歩み、かつエンジニアとしてプロダクト開発の経験も持つ照屋さんは、「若年層のキャリア支援を通じて日本社会を支えていきたい」と熱弁し、ノンデスクワーカー向けの転職AIエージェントをプレゼンしました。

金谷氏は、「AIに対してハードルを感じさせないサービスにする必要がある」と助言を贈り、清明氏は、「転職希望者以外にもユーザーのパイを広げていかないと、結局は人材が足りなくなる可能性がある」と指摘。松本氏は、「AIに特化しているので、“本音が言える”という価値を前面に押し出した方が差別化できるのでは?」と新たな視点を提示しました。
⑨ 株式会社Golfism 代表取締役 田畑 蓮 さん
「ゴルフ×観光」で地域活性化!訪日外国人向けゴルフツーリズムの予約サービス

株式会社Golfism 田畑蓮さんのピッチの様子
「幼少期からゴルフに親しんできた」という原体験を持つ田畑さん。「将来的にゴルフリゾートの運営もめざしている」とのビジョンとともに、訪日外国人向けゴルフツーリズムの予約サービスをプレゼンしました。

これに対し金谷氏は、「ビジネスモデルが優れていて、資金調達を経て大きく広がる事業だと期待している」とコメント。松本氏は、「既存の国内会員の満足度を下げない工夫があれば、資本力争いにならず独自のポジショニングを築けると思う」と、具体的なアドバイスを贈りました。
⑩ 株式会社SmartEC 代表取締役 山下 健志 さん
スマホで快適な「縦型ECサイト」で購入率約2倍!次世代のEC体験を開発ゼロで導入できるプラットフォーム

株式会社SmartEC 山下健志さんのピッチの様子
「妻はオンラインショッピングが好きだが、横で見ているといつも使いづらそうにしている」という身近な課題に着目し、「縦型ECサイト」を発表した山下さん。「現在はアパレル業界を中心に導入しているが、今後はより多くの業種に導入して実証実験もしたいので、ぜひみなさんに紹介してほしい」という呼びかけでプレゼンを締めくくりました。

清明氏は、「ぜひ使いたいし、ニーズに即した非常にすぐれたサービス」と絶賛。松本氏も、「ビジネスモデルごと提案してプラットフォーマーを巻き込むことができれば、資金調達もしやすくなり、大きく成長する」と期待を寄せました。
⑪ ドリギー株式会社 代表取締役 CEO 太田 晶景 さん
写真をパシャッと撮るだけで食事摂取量/カロリー/栄養素が分かる、介護施設向けアプリ『めしパシャ』

ドリギー株式会社 太田晶景さんのピッチの様子
太田さんは、「すべての高齢者が最期まで“おいしい”と言える世の中をつくりたい」というビジョンを叶えるべく、『めしパシャ』をプレゼン。「高齢化はグローバルな課題なので、世界の介護市場を視野に入れている」との展望も語りました。

太田さんのピッチについて金谷氏は、「小児科などの病院にも同じ課題があるので、広い視野で導入先を検討してほしい」とコメント。松本氏は、「介護事業者のオペレーションを変えずに導入できるかどうかが本格的な普及へのカギになる。将来的には食器の返却口で自動撮影できるようなハードの開発も検討してみては?」と具体的な提案を示しました。
⑫ 株式会社アルパカ 代表取締役 石垣 翔太 さん
名刺から請求書、図面まで。全帳票対応型AI文書管理アプリ『ドキュパカ!』

株式会社アルパカ 石垣翔太さんのピッチの様子
「以前は製造業で、紙まみれの職場で働いていた」という石垣さん。『ドキュパカ!』は、当時の「注文入力時のミスで大きな損失を出してしまった」という経験から生まれた事業です。

清明氏は、「間違いなくニーズがあるので一定の成長は見込めるが、さらに上をめざすなら顧客のコスト削減だけでなく売上増につながるサポートも必要」と助言。松本氏は「マーケットが明確でサービスも分かりやすい」と評価し、さらに金谷氏も、「DXに後ろ向きな中小企業も少なくないので、士業の方を通じて導入先を開拓するというのは良い発想」と賛辞を贈りました。
【コメンテーターの総評】
以上で事業ピッチは終了。最後に、3名のコメンテーターから総評をいただきました。

総評時の様子
清明氏
「“熱い想いを持った人と一緒に世の中を良くしていきたい”とずっと思っているので、今日は素晴らしい刺激をいただきました。今日発表された事業がすべて実現したら、必ず日本は明るくなると勇気づけられました。」
金谷氏
「優れたピッチを拝見し、この10年ほどで関西のスタートアップのレベルが格段に上がっているのを感じました。ただ、ピッチはピッチ。結果を残すのは事業です。“突き抜けてやる”という気持ちで頑張ってください。」
松本氏
「SIOのプログラムを通して、メンターの方々が本当に親身になって支援してきたのがピッチから伝わってきました。支援を受けた以上は“必ず成功させる”という使命感が生まれると思うので、ぜひやり遂げてほしいです。」
【ネットワーキング】
ピッチ終了後、12名の登壇者たちはそれぞれのブースへ。来場者の方々とネットワーキングを行いました。3名のコメンテーターも、登壇者たちと熱心に意見交換。各社、事業加速に向け、さらなるエネルギーが注がれる場となりました。




ネットワーキングの様子
SIOのアクセラレーションプログラムを通して、大きな成長を遂げた12名の起業家たち。今回のデモデイではコメンテーターから貴重なアドバイスももらい、次のステップがより明確になったのではないでしょうか?
みなさんの今後のご活躍、OIHスタッフ一同楽しみにしております!
イベント概要
Startup Initial program Osaka ACCELERATION DEMO DAY
開催日時 2025年1月26日(日)13:00~18:00